投稿

自筆証書遺言書保管制度の活用

イメージ
亡くなる本人が自分の財産の行方について何らこだわっておらず遺言書を書くつもりもなかったとしても、相続人にとってみると、法定相続人の構図を考えた場合、何らかの手を先に打っておいた方が後で苦労せずに済む場合があります。 以下のような例について考えてみます: まず、実父が亡くなった時、実家の不動産の所有権が、法定通りに、実母(持分 1/2)、長姉(持分 1/8)、次姉(持分 1/8)、兄(持分 1/8)、本人(持分 1/8)の共有で相続されたとします。 次に、本人が突然、深刻な病気にかかってしまったとします。仮に、病気がこのまま悪化し、そのまま回復せずに実家・養家のいずれの家族よりも先に、遺言を残さずに亡くなったとすると、どうなるでしょう? 本人には配偶者も子供もいないので、この場合はまず、直系尊属に相続権が発生します。つまりこの場合、実家と養家のいずれもが、本人の遺産について権利を有することになります。実父から相続した実家の不動産に対する 1/8 の共有持分権についても、実家の家族だけではなく、養家の家族にも相続権が発生することになります。 不動産の共有権が身内の間のみに留まる分には問題は少ないでしょうが、他家が関わってくると面倒なことが起こりがちです。 このような場合、養家の家族に相続権が発生しないように、今のうちに何らかの形で手続を踏んでおけば複雑化を防ぐことができます。その手段として、不動産の共有持分権を全て 今のうちに実母へ 贈与 又は 譲渡 する 遺言により実母に 相続 させる という手段が考えられます。 そして、それらの税その他の費用について考えてみた場合 贈与又は譲渡→贈与税又は譲渡税の発生(通常、評価額又は売買価格の 20%) 相続→相続税の発生(遺産額によっては 0% で済む) 相続のための公正証書遺言書の作成→相場費用 10 万円~15万円程度 相続のための自筆証書遺言書の作成→無料 となり、遺産額が少額の場合、一番費用がかからずに済むのは、自筆証書遺言書作成の上、遺言により実母に相続させることとなります。 自筆証書遺言書保管制度 従来は、自筆証書遺言書は家庭裁判所による検認手続が必須となっていましたが、2020 年 7 月 10 日に始まった「 自筆証書遺言書保管制度 」を利...

行政書士 過去問 2018 問題 31

問題 31 弁済に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。 債務者が元本のほか利息および費用を支払うべき場合において、弁済として給付した金銭の額がその債務の全部を消滅させるのに足りないときは、債務者による充当の指定がない限り、これを順次に費用、利息および元本に充当しなければならない。 同一の債権者に対して数個の金銭債務を負担する債務者が、弁済として給付した金銭の額が全ての債務を消滅させるのに足りない場合であって、債務者が充当の指定をしないときは、債権者が弁済を受領する時に充当の指定をすることができるが、債務者がその充当に対して直ちに異議を述べたときは、この限りでない。 金銭債務を負担した債務者が、債権者の承諾を得て金銭の支払に代えて不動産を給付する場合において、代物弁済が成立するためには、債権者に所有権を移転させる旨の意思表示をするだけでは足りず、所有権移転登記がされなければならない。 債権者があらかじめ弁済の受領を拒んでいる場合、債務者は、口頭の提供をすれば債務不履行責任を免れるが、債権者において契約そのものの存在を否定する等弁済を受領しない意思が明確と認められるときは、口頭の提供をしなくても同責任を免れる。 債権者があらかじめ金銭債務の弁済の受領を拒んでいる場合、債務者は、口頭の提供をした上で弁済の目的物を供託することにより、債務を消滅させることができる。 正解 1 ❌ 債務者が元本のほか利息および費用を支払うべき場合において、弁済として給付した金銭の額がその債務の全部を消滅させるのに足りないときは、債務者による充当の指定がない限り、これを順次に費用、利息および元本に充当しなければならない。 👉 解説 ⭕ 同一の債権者に対して数個の金銭債務を負担する債務者が、弁済として給付した金銭の額が全ての債務を消滅させるのに足りない場合であって、債務者が充当の指定をしないときは、債権者が弁済を受領する時に充当の指定をすることができるが、債務者がその充当に対して直ちに異議を述べたときは、この限りでない。 👉 解説 ⭕ 金銭債務を負担した債務者が、債権者の承諾を得て金銭の支払に代えて不動産を給付する場合において、代物弁済が成立するためには、債権者に所有権を移転させる旨の意思表示をするだけでは足りず、所有権...

行政書士 過去問 2018 問題 30

問題 30 抵当権の効力に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。 抵当権の効力は抵当不動産の従物にも及ぶが、抵当不動産とは別個に従物について対抗要件を具備しなければ、その旨を第三者に対して対抗することができない。 借地上の建物に抵当権が設定された場合において、その建物の抵当権の効力は、特段の合意がない限り借地権には及ばない。 買戻特約付売買の買主が目的不動産について買主の債権者のために抵当権を設定し、その旨の登記がなされたところ、その後、売主が買戻権を行使した場合、買主が売主に対して有する買戻代金債権につき、上記抵当権者は物上代位権を行使することができる。 抵当不動産が転貸された場合、抵当権者は、原則として、転貸料債権(転貸賃料請求権)に対しても物上代位権を行使することができる。 抵当権者が、被担保債権について利息および遅延損害金を請求する権利を有するときは、抵当権者は、原則として、それらの全額について優先弁済権を行使することができる。 正解 3 ❌ 抵当権の効力は抵当不動産の従物にも及ぶが、抵当不動産とは別個に従物について対抗要件を具備しなければ、その旨を第三者に対して対抗することができない。 👉 解説 ❌ 借地上の建物に抵当権が設定された場合において、その建物の抵当権の効力は、特段の合意がない限り借地権には及ばない。 👉 解説 ⭕ 買戻特約付売買の買主が目的不動産について買主の債権者のために抵当権を設定し、その旨の登記がなされたところ、その後、売主が買戻権を行使した場合、買主が売主に対して有する買戻代金債権につき、上記抵当権者は物上代位権を行使することができる。 👉 解説 ❌ 抵当不動産が転貸された場合、抵当権者は、原則として、転貸料債権(転貸賃料請求権)に対しても物上代位権を行使することができる。 👉 解説 ❌ 抵当権者が、被担保債権について利息および遅延損害金を請求する権利を有するときは、抵当権者は、原則として、それらの全額について優先弁済権を行使することができる。 👉 解説 解説 1: ❌ 抵当権の効力は抵当不動産の従物にも及ぶが、抵当不動産とは別個に従物について対抗要件を具備しなければ、その旨を第三者に対して対抗することができない。 妥当でない。判例...

行政書士 過去問 2018 問題 29

問題 29 A が登記簿上の所有名義人である甲土地を B が買い受ける旨の契約(以下「本件 売買契約」という。)を A・B 間で締結した場合に関する次のア〜オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。 甲土地は実際には C の所有に属していたが、C が A に無断で甲土地の所有名義人を A としていた場合において、A がその事情を知らない B との間で本件売買契約を締結したときであっても、B は C に対して甲土地の引渡しを求めることができない。 甲土地は A の所有に属していたところ、A の父である D が、A に無断で A の代理人と称して本件売買契約を締結し、その後 D が死亡して A が D を単独で相続したときは、A は、D の法律行為の追認を拒絶することができ、また、損害賠償の責任を免れる。 甲土地が相続により A および E の共有に属していたところ、A が E に無断で A の単独所有名義の登記をして B との間で本件売買契約を締結し、B が所有権移転登記をした場合において、B がその事情を知らず、かつ、過失がないときは、B は甲土地の全部について所有権を取得する。 甲土地は A の所有に属していたところ、本件売買契約が締結され、B 名義での所有権移転の仮登記がされた場合において、A が甲土地をその事情を知らない F に売却し所有権移転登記をしたときは、B は本登記をしない限り F に対して所有権の取得を対抗することができない。 甲土地は A の所有に属していたところ、G が A に無断で甲土地上に建物を築造し、その建物の所有権保存登記をした場合において、本件売買契約により甲土地の所有者となった B は、G が当該建物の所有権を他に譲渡していたとしても、登記名義が G にある限り、G に対して当該建物の収去および土地の明渡しを求めることができる。 ア・ウ ア・オ イ・ウ イ・エ エ・オ 正解 5 ❌ 甲土地は実際には C の所有に属していたが、C が A に無断で甲土地の所有名義人を A としていた場合において、A がその事情を知らない B との間で本件売買契約を締結したときであっても、B は C に対して甲土地の引渡しを求めることができない。 👉 解説 ❌ 甲土地は A...

行政書士 過去問 2018 問題 28

問題 28 A・B 間で締結された契約(以下「本件契約」という。)に附款がある場合に関する次のア〜オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。 本件契約に、経済情勢に一定の変動があったときには当該契約は効力を失う旨の条項が定められている場合、効力の喪失時期は当該変動の発生時が原則であるが、A・B の合意により、効力の喪失時期を契約時に遡らせることも可能である。 本件契約が売買契約であり、買主 B が品質良好と認めた場合には代金を支払うとする旨の条項が定められている場合、この条項はその条件の成就が代金債務者である B の意思のみに係る随意条件であるから無効である。 本件契約が和解契約であり、B は一定の行為をしないこと、もし B が当該禁止行為をした場合には A に対して違約金を支払う旨の条項が定められている場合、A が、第三者 C を介して B の当該禁止行為を誘発したときであっても、B は A に対して違約金支払の義務を負う。 本件契約が農地の売買契約であり、所有権移転に必要な行政の許可を得られたときに効力を生じる旨の条項が定められている場合において、売主 A が当該許可を得ることを故意に妨げたときであっても、条件が成就したとみなされることはない。 本件契約が金銭消費貸借契約であり、借主 B が将来社会的に成功を収めた場合に返済する旨の条項(いわゆる出世払い約款)が定められている場合、この条項は停止条件を定めたものであるから、B は社会的な成功を収めない限り返済義務を負うものではない。 ア・イ ア・エ イ・ウ ウ・オ エ・オ 正解 2 ⭕ 本件契約に、経済情勢に一定の変動があったときには当該契約は効力を失う旨の条項が定められている場合、効力の喪失時期は当該変動の発生時が原則であるが、A・B の合意により、効力の喪失時期を契約時に遡らせることも可能である。 👉 解説 ❌ 本件契約が売買契約であり、買主 B が品質良好と認めた場合には代金を支払うとする旨の条項が定められている場合、この条項はその条件の成就が代金債務者である B の意思のみに係る随意条件であるから無効である。 👉 解説 ❌ 本件契約が和解契約であり、B は一定の行為をしないこと、もし B が当該禁止行為をした場合には A...

行政書士 過去問 2018 問題 27

問題 27 公序良俗および強行法規等の違反に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。 食品の製造販売を業とする者が、有害物質の混入した食品を、食品衛生法に抵触するものであることを知りながら、あえて製造販売し取引を継続していた場合には、当該取引は、公序良俗に反して無効である。 債権の管理または回収の委託を受けた弁護士が、その手段として訴訟提起や保全命令の申立てをするために当該債権を譲り受ける行為は、たとえそれが弁護士法に違反するものであったとしても、司法機関を利用して不当な利益を追求することを目的として行われた等の事情がない限り、直ちにその私法上の効力が否定されるものではない。 組合契約において、組合員はやむを得ない事由があっても任意に脱退することができない旨の約定が存する場合であっても、組合員の脱退に関する民法の規定は強行法規ではないから、かかる約定の効力が否定されるものではない。 契約が公序に反することを目的とするものであるかどうかは、当該契約が成立した時点における公序に照らして判断すべきである。 男子の定年年齢を 60 歳、女子の定年年齢を 55 歳とする旨の会社の就業規則は、経営上の観点から男女別定年制を設けなければならない合理的理由が認められない場合、公序良俗に反して無効である。 正解 3 ⭕ 食品の製造販売を業とする者が、有害物質の混入した食品を、食品衛生法に抵触するものであることを知りながら、あえて製造販売し取引を継続していた場合には、当該取引は、公序良俗に反して無効である。 👉 解説 ⭕ 債権の管理または回収の委託を受けた弁護士が、その手段として訴訟提起や保全命令の申立てをするために当該債権を譲り受ける行為は、たとえそれが弁護士法に違反するものであったとしても、司法機関を利用して不当な利益を追求することを目的として行われた等の事情がない限り、直ちにその私法上の効力が否定されるものではない。 👉 解説 ❌ 組合契約において、組合員はやむを得ない事由があっても任意に脱退することができない旨の約定が存する場合であっても、組合員の脱退に関する民法の規定は強行法規ではないから、かかる約定の効力が否定されるものではない。 👉 解説 ⭕ 契約が公序に反することを目的とするものであるかどうか...

行政書士 過去問 2019 問題 35

問題 35 氏に関する次のア〜オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。 甲山太郎と乙川花子が婚姻届に署名捺印した場合において、慣れ親しんだ呼称として婚姻後もそれぞれ甲山、乙川の氏を引き続き称したいと考え、婚姻後の氏を定めずに婚姻届を提出したときは、この婚姻届は受理されない。 夫婦である乙川太郎と乙川花子が離婚届を提出し受理されたが、太郎が慣れ親しんだ呼称として、離婚後も婚姻前の氏である甲山でなく乙川の氏を引き続き称したいと考えたとしても、離婚により復氏が確定し、離婚前の氏を称することができない。 甲山太郎を夫とする妻甲山花子は、夫が死亡した場合において、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって婚姻前の氏である乙川を称することができる。 夫婦である甲山花子と甲山太郎の間に出生した子である一郎は、両親が離婚をして、母花子が復氏により婚姻前の氏である乙川を称するようになった場合には、届け出ることで母と同じ乙川の氏を称することができる。 甲山花子と、婚姻により改氏した甲山太郎の夫婦において、太郎が縁組により丙谷二郎の養子となったときは、太郎および花子は養親の氏である丙谷を称する。 ア・イ ア・ウ イ・エ ウ・オ エ・オ 正解 2 ⭕ 甲山太郎と乙川花子が婚姻届に署名捺印した場合において、慣れ親しんだ呼称として婚姻後もそれぞれ甲山、乙川の氏を引き続き称したいと考え、婚姻後の氏を定めずに婚姻届を提出したときは、この婚姻届は受理されない。 👉 解説 ❌ 夫婦である乙川太郎と乙川花子が離婚届を提出し受理されたが、太郎が慣れ親しんだ呼称として、離婚後も婚姻前の氏である甲山でなく乙川の氏を引き続き称したいと考えたとしても、離婚により復氏が確定し、離婚前の氏を称することができない。 👉 解説 ⭕ 甲山太郎を夫とする妻甲山花子は、夫が死亡した場合において、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって婚姻前の氏である乙川を称することができる。 👉 解説 ❌ 夫婦である甲山花子と甲山太郎の間に出生した子である一郎は、両親が離婚をして、母花子が復氏により婚姻前の氏である乙川を称するようになった場合には、届け出ることで母と同じ乙川の氏を称することができる。 👉 解説 ❌ 甲山花子と、婚姻により改...