行政書士 過去問 2019 問題 32
問題 32 建物が転貸された場合における賃貸人(建物の所有者)、賃借人(転貸人)および転借人の法律関係に関する次のア〜オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。
- 賃貸人の承諾がある転貸において、賃貸人が当該建物を転借人に譲渡し、賃貸人の地位と転借人の地位とが同一人に帰属したときであっても、賃借人と転借人間に転貸借関係を消滅させる特別の合意がない限り、転貸借関係は当然には消滅しない。
- 賃貸人の承諾がある転貸において、賃借人による賃料の不払があったときは、賃貸人は、賃借人および転借人に対してその支払につき催告しなければ、原賃貸借を解除することができない。
- 賃貸人の承諾がある転貸であっても、これにより賃貸人と転借人間に賃貸借契約が成立するわけではないので、賃貸人は、転借人に直接に賃料の支払を請求することはできない。
- 無断転貸であっても、賃借人と転借人間においては転貸借は有効であるので、原賃貸借を解除しなければ、賃貸人は、転借人に対して所有権に基づく建物の明渡しを請求することはできない。
- 無断転貸において、賃貸人が転借人に建物の明渡しを請求したときは、転借人は建物を使用収益できなくなるおそれがあるので、賃借人が転借人に相当の担保を提供していない限り、転借人は、賃借人に対して転貸借の賃料の支払を拒絶できる。
- ア・イ
- ア・オ
- イ・ウ
- ウ・エ
- エ・オ
正解 2
- ⭕ 賃貸人の承諾がある転貸において、賃貸人が当該建物を転借人に譲渡し、賃貸人の地位と転借人の地位とが同一人に帰属したときであっても、賃借人と転借人間に転貸借関係を消滅させる特別の合意がない限り、転貸借関係は当然には消滅しない。👉 解説
- ❌ 賃貸人の承諾がある転貸において、賃借人による賃料の不払があったときは、賃貸人は、賃借人および転借人に対してその支払につき催告しなければ、原賃貸借を解除することができない。👉 解説
- ❌ 賃貸人の承諾がある転貸であっても、これにより賃貸人と転借人間に賃貸借契約が成立するわけではないので、賃貸人は、転借人に直接に賃料の支払を請求することはできない。👉 解説
- ❌ 無断転貸であっても、賃借人と転借人間においては転貸借は有効であるので、原賃貸借を解除しなければ、賃貸人は、転借人に対して所有権に基づく建物の明渡しを請求することはできない。👉 解説
- ⭕ 無断転貸において、賃貸人が転借人に建物の明渡しを請求したときは、転借人は建物を使用収益できなくなるおそれがあるので、賃借人が転借人に相当の担保を提供していない限り、転借人は、賃借人に対して転貸借の賃料の支払を拒絶できる。👉 解説
解説
ア: ⭕ 賃貸人の承諾がある転貸において、賃貸人が当該建物を転借人に譲渡し、賃貸人の地位と転借人の地位とが同一人に帰属したときであっても、賃借人と転借人間に転貸借関係を消滅させる特別の合意がない限り、転貸借関係は当然には消滅しない。
妥当である。「賃貸人の地位と転借人の地位とが同一人に帰した場合であつても、転貸借は、当事者間にこれを消滅させる合意の成立しない限り、消滅しないものと解すべきである。」(最判昭和 35 年 6 月 23 日)とする判例による。
イ: ❌ 賃貸人の承諾がある転貸において、賃借人による賃料の不払があったときは、賃貸人は、賃借人および転借人に対してその支払につき催告しなければ、原賃貸借を解除することができない。
妥当でない。「賃料の延滞を理由として賃貸借を解除するには、賃貸人は賃借人に対して催告をすれば足り、転借人にその支払の機会を与える必要はない」(最判昭和 37 年 3 月 29 日)とする判例により、転借人にまで催告する必要はない。
ウ: ❌ 賃貸人の承諾がある転貸であっても、これにより賃貸人と転借人間に賃貸借契約が成立するわけではないので、賃貸人は、転借人に直接に賃料の支払を請求することはできない。
妥当でない。613 条(転貸の効果)「賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。」と記されているので、転借人は賃貸人の請求があれば、たとえ賃借人へ賃料を前払していたとしても、請求に応じる義務があることになり、賃貸人は転借人に直接に賃料の支払を請求することができる。
エ: ❌ 無断転貸であっても、賃借人と転借人間においては転貸借は有効であるので、原賃貸借を解除しなければ、賃貸人は、転借人に対して所有権に基づく建物の明渡しを請求することはできない。
妥当でない。「賃借権の譲渡又は転貸を承諾しない賃貸人は、賃貸借契約を解除しなくても、譲受人又は転借人に対して賃借物の明渡しを請求することができる」(最判昭和 26 年 5 月 31 日 民集 5 巻 6 号 359 頁)とする判例による。
オ: ⭕ 無断転貸において、賃貸人が転借人に建物の明渡しを請求したときは、転借人は建物を使用収益できなくなるおそれがあるので、賃借人が転借人に相当の担保を提供していない限り、転借人は、賃借人に対して転貸借の賃料の支払を拒絶できる。
妥当である。「建物賃借人は、賃借建物に対する権利に基づき自己に対して明渡を請求することができる第三者からその明渡を求められた場合には、それ以後、賃料の支払いを拒絶することができる」(最判昭和 50 年 4 月 25 日 民集 29 巻 4 号 556 頁)とする判例による。
このケースに合わせて言い表すと「転借人は、転借建物に対する権利に基づき自己に対して明渡を請求することができる賃貸人からその明渡しを求められた場合には、それ以後、転貸人への賃料の支払いを拒絶することができる」となる。
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