行政書士 過去問 2019 問題 04
問題 4 家族・婚姻に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。
- 嫡出でない子の法定相続分を嫡出子の 2 分の 1 とする民法の規定は、当該規定が補充的に機能する規定であることから本来は立法裁量が広く認められる事柄であるが、法律婚の保護という立法目的に照らすと著しく不合理であり、憲法に違反する。
- 国籍法が血統主義を採用することには合理性があるが、日本国民との法律上の親子関係の存否に加え、日本との密接な結びつきの指標として一定の要件を設け、これを満たす場合に限り出生後の国籍取得を認めるとする立法目的には、合理的な根拠がないため不合理な差別に当たる。
- 出生届に嫡出子または嫡出でない子の別を記載すべきものとする戸籍法の規定は、嫡出でない子について嫡出子との関係で不合理な差別的取扱いを定めたものであり、憲法に違反する。
- 厳密に父性の推定が重複することを回避するための期間(100 日)を超えて女性の再婚を禁止する民法の規定は、婚姻および家族に関する事項について国会に認められる合理的な立法裁量の範囲を超え、憲法に違反するに至った。
- 夫婦となろうとする者の間の個々の協議の結果として夫の氏を選択する夫婦が圧倒的多数を占める状況は実質的に法の下の平等に違反する状態といいうるが、婚姻前の氏の通称使用が広く定着していることからすると、直ちに違憲とまではいえない。
正解 4
- ❌ 嫡出でない子の法定相続分を嫡出子の 2 分の 1 とする民法の規定は、当該規定が補充的に機能する規定であることから本来は立法裁量が広く認められる事柄であるが、法律婚の保護という立法目的に照らすと著しく不合理であり、憲法に違反する。👉 解説
- ❌ 国籍法が血統主義を採用することには合理性があるが、日本国民との法律上の親子関係の存否に加え、日本との密接な結びつきの指標として一定の要件を設け、これを満たす場合に限り出生後の国籍取得を認めるとする立法目的には、合理的な根拠がないため不合理な差別に当たる。👉 解説
- ❌ 出生届に嫡出子または嫡出でない子の別を記載すべきものとする戸籍法の規定は、嫡出でない子について嫡出子との関係で不合理な差別的取扱いを定めたものであり、憲法に違反する。👉 解説
- ⭕ 厳密に父性の推定が重複することを回避するための期間(100 日)を超えて女性の再婚を禁止する民法の規定は、婚姻および家族に関する事項について国会に認められる合理的な立法裁量の範囲を超え、憲法に違反するに至った。👉 解説
- ❌ 夫婦となろうとする者の間の個々の協議の結果として夫の氏を選択する夫婦が圧倒的多数を占める状況は実質的に法の下の平等に違反する状態といいうるが、婚姻前の氏の通称使用が広く定着していることからすると、直ちに違憲とまではいえない。👉 解説
解説
1: ❌ 嫡出でない子の法定相続分を嫡出子の 2 分の 1 とする民法の規定は、当該規定が補充的に機能する規定であることから本来は立法裁量が広く認められる事柄であるが、法律婚の保護という立法目的に照らすと著しく不合理であり、憲法に違反する。
現在の民法 900 条 4 号には「嫡出でない子の法定相続分を嫡出子の 2 分の 1 とする」規定はないので全体的に間違っている。
2: ❌ 国籍法が血統主義を採用することには合理性があるが、日本国民との法律上の親子関係の存否に加え、日本との密接な結びつきの指標として一定の要件を設け、これを満たす場合に限り出生後の国籍取得を認めるとする立法目的には、合理的な根拠がないため不合理な差別に当たる。
「合理的な根拠があるというべきである」(最大判平成 20 年 6 月 4 日)としているため、「合理的な根拠がないため不合理な差別に当たる」という部分が間違っている。他は正しい。
3: ❌ 出生届に嫡出子または嫡出でない子の別を記載すべきものとする戸籍法の規定は、嫡出でない子について嫡出子との関係で不合理な差別的取扱いを定めたものであり、憲法に違反する。
「不合理な差別的取扱いを定めたものとはいえず、憲法 14 条 1 項に違反するものではない」(最判平成 25 年 9 月 26 日)としているため、「不合理な差別的取扱いを定めたものであり、憲法に違反する」という部分は間違ってる。
4: ⭕ 厳密に父性の推定が重複することを回避するための期間(100 日)を超えて女性の再婚を禁止する民法の規定は、婚姻および家族に関する事項について国会に認められる合理的な立法裁量の範囲を超え、憲法に違反するに至った。
正しい(最大判平成 27 年 12 月 16 日)。それにより民法 733 条は改正された。
5: ❌ 夫婦となろうとする者の間の個々の協議の結果として夫の氏を選択する夫婦が圧倒的多数を占める状況は実質的に法の下の平等に違反する状態といいうるが、婚姻前の氏の通称使用が広く定着していることからすると、直ちに違憲とまではいえない。
「法の下の平等に違反する状態といいうる」から以降が間違っている。判例では「憲法 14 条 1 項に違反するものではない」(最大判平成 27 年 12 月 16 日)としている。婚姻前の氏の通称使用も広く定着はしていない。
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