行政書士 過去問 2018 問題 27

問題 27 公序良俗および強行法規等の違反に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 食品の製造販売を業とする者が、有害物質の混入した食品を、食品衛生法に抵触するものであることを知りながら、あえて製造販売し取引を継続していた場合には、当該取引は、公序良俗に反して無効である。
  2. 債権の管理または回収の委託を受けた弁護士が、その手段として訴訟提起や保全命令の申立てをするために当該債権を譲り受ける行為は、たとえそれが弁護士法に違反するものであったとしても、司法機関を利用して不当な利益を追求することを目的として行われた等の事情がない限り、直ちにその私法上の効力が否定されるものではない。
  3. 組合契約において、組合員はやむを得ない事由があっても任意に脱退することができない旨の約定が存する場合であっても、組合員の脱退に関する民法の規定は強行法規ではないから、かかる約定の効力が否定されるものではない。
  4. 契約が公序に反することを目的とするものであるかどうかは、当該契約が成立した時点における公序に照らして判断すべきである。
  5. 男子の定年年齢を 60 歳、女子の定年年齢を 55 歳とする旨の会社の就業規則は、経営上の観点から男女別定年制を設けなければならない合理的理由が認められない場合、公序良俗に反して無効である。

正解 3

  1. ⭕ 食品の製造販売を業とする者が、有害物質の混入した食品を、食品衛生法に抵触するものであることを知りながら、あえて製造販売し取引を継続していた場合には、当該取引は、公序良俗に反して無効である。👉 解説
  2. ⭕ 債権の管理または回収の委託を受けた弁護士が、その手段として訴訟提起や保全命令の申立てをするために当該債権を譲り受ける行為は、たとえそれが弁護士法に違反するものであったとしても、司法機関を利用して不当な利益を追求することを目的として行われた等の事情がない限り、直ちにその私法上の効力が否定されるものではない。👉 解説
  3. ❌ 組合契約において、組合員はやむを得ない事由があっても任意に脱退することができない旨の約定が存する場合であっても、組合員の脱退に関する民法の規定は強行法規ではないから、かかる約定の効力が否定されるものではない。👉 解説
  4. ⭕ 契約が公序に反することを目的とするものであるかどうかは、当該契約が成立した時点における公序に照らして判断すべきである。👉 解説
  5. ⭕ 男子の定年年齢を 60 歳、女子の定年年齢を 55 歳とする旨の会社の就業規則は、経営上の観点から男女別定年制を設けなければならない合理的理由が認められない場合、公序良俗に反して無効である。👉 解説

解説

1: ⭕ 食品の製造販売を業とする者が、有害物質の混入した食品を、食品衛生法に抵触するものであることを知りながら、あえて製造販売し取引を継続していた場合には、当該取引は、公序良俗に反して無効である。

妥当である。90 条(公序良俗)に「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。」と記されているが、具体的にどのような行為が公序良俗違反に該当するのかは個別の解釈に任されている。
このケースの場合は、「アラレの製造販売を業とする者が硼砂の有毒性物質であり、これを混入したアラレを販売することが食品衛生法の禁止しているものであることを知りながら、敢えてこれを製造の上、同じ販売業者である者の要請に応じて売り渡し、その取引を継続したという場合には、一般大衆の購買のルートに乗せたものと認められ、その結果公衆衛生を害するに至るであろうことはみやすき道理であるから、そのような取引は民法 90 条に抵触し無効のものと解するを相当とする」(最判昭和 39 年 1 月 23 日)とする判例により、公序良俗に反して無効である。

2: ⭕ 債権の管理または回収の委託を受けた弁護士が、その手段として訴訟提起や保全命令の申立てをするために当該債権を譲り受ける行為は、たとえそれが弁護士法に違反するものであったとしても、司法機関を利用して不当な利益を追求することを目的として行われた等の事情がない限り、直ちにその私法上の効力が否定されるものではない。

妥当である。90 条(公序良俗)に「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。」と記されているが、具体的にどのような行為が公序良俗違反に該当するのかは個別の解釈に任されている。
このケースの場合は、「債権の管理又は回収の委託を受けた弁護士が、その手段として本案訴訟の提起や保全命令の申立てをするために当該債権を譲り受ける行為は、他人間の法的紛争に介入し、司法機関を利用して不当な利益を追求することを目的として行われたなど、公序良俗に反するような事情があれば格別、仮にこれが弁護士法 28 条に違反するものであったとしても、直ちにその私法上の効力が否定されるものではない」(最判平成 21 年 8 月 12 日)とする判例があるので妥当である。

3: ❌ 組合契約において、組合員はやむを得ない事由があっても任意に脱退することができない旨の約定が存する場合であっても、組合員の脱退に関する民法の規定は強行法規ではないから、かかる約定の効力が否定されるものではない。

妥当でない。678 条(組合員の脱退)に「組合契約で組合の存続期間を定めなかったとき、又はある組合員の終身の間組合が存続すべきことを定めたときは、各組合員は、いつでも脱退することができる。ただし、やむを得ない事由がある場合を除き、組合に不利な時期に脱退することができない。」と記されている。そして、この規定が強行法規であるかについては、「民法 678 条は、組合員は、やむを得ない事由がある場合には、組合の存続期間の定めの有無にかかわらず、常に組合から任意に脱退することができる旨を規定しているものと解されるところ、同条のうち右の旨を規定する部分は、強行法規であり、これに反する組合契約における約定は効力を有しないものと解するのが相当である。けだし、やむを得ない事由があっても任意の脱退を許さない旨の組合契約は、組合員の自由を著しく制限するものであり、公の秩序に反するものというべきだからである」(最判平成 11 年 2 月 23 日)とする判例があるので、組合員の脱退に関する民法の規定は強行法規であり、この約定の効力は否定される
なお、公の秩序については、90 条(公序良俗)に「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。」と記されているが、具体的にどのような行為が公序良俗違反に該当するのかは個別の解釈に任されている。

4: ⭕ 契約が公序に反することを目的とするものであるかどうかは、当該契約が成立した時点における公序に照らして判断すべきである。

妥当である。「法律行為が公序に反することを目的とするものであるとして無効になるかどうかは、法律行為がされた時点の公序に照らして判断すべきである」(最判平成 15 年 4 月 18 日)とする判例による。
なお、公序については、90 条(公序良俗)に「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。」と記されているが、具体的にどのような行為が公序良俗違反に該当するのかは個別の解釈に任されている。

5: ⭕ 男子の定年年齢を 60 歳、女子の定年年齢を 55 歳とする旨の会社の就業規則は、経営上の観点から男女別定年制を設けなければならない合理的理由が認められない場合、公序良俗に反して無効である。

妥当である。「会社がその就業規則中に定年年齢を男子 60 歳、女子 55 歳と定めた場合において、会社の企業経営上定年年齢において女子を差別しなければならない合理的理由が認められないときは、右就業規則中女子の定年年齢を男子より低く定めた部分は、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法 90 条の規定により無効である」(最判昭和 56 年 3 月 24 日)とする判例による。
なお、公序良俗については、90 条(公序良俗)に「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。」と記されているが、具体的にどのような行為が公序良俗違反に該当するのかは個別の解釈に任されている。

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