行政書士 過去問 2019 問題 03

問題 3 議員の地位に関する次の記述のうち、法令および最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 衆参両議院の比例代表選出議員に欠員が出た場合、当選順位に従い繰上補充が行われるが、名簿登載者のうち、除名、離党その他の事由により名簿届出政党等に所属する者でなくなった旨の届出がなされているものは、繰上補充の対象とならない。
  2. 両議院の議員は、国会の会期中逮捕されないとの不逮捕特権が認められ、憲法が定めるところにより、院外における現行犯の場合でも逮捕されない。
  3. 両議院には憲法上自律権が認められており、所属議員への懲罰については司法審査が及ばないが、除名処分については、一般市民法秩序と関連するため、裁判所は審査を行うことができる。
  4. 地方議会の自律権は、議院の自律権とは異なり法律上認められたものにすぎないので、裁判所は、除名に限らず、地方議会による議員への懲罰について広く審査を行うことができる。
  5. 地方議会の議員は、住民から直接選挙されるので、国会議員と同様に免責特権が認められ、議会で行った演説、討論または表決について議会外で責任を問われない。

正解 1

  1. ⭕ 衆参両議院の比例代表選出議員に欠員が出た場合、当選順位に従い繰上補充が行われるが、名簿登載者のうち、除名、離党その他の事由により名簿届出政党等に所属する者でなくなった旨の届出がなされているものは、繰上補充の対象とならない。👉 解説
  2. ❌ 両議院の議員は、国会の会期中逮捕されないとの不逮捕特権が認められ、憲法が定めるところにより、院外における現行犯の場合でも逮捕されない。👉 解説
  3. ❌ 両議院には憲法上自律権が認められており、所属議員への懲罰については司法審査が及ばないが、除名処分については、一般市民法秩序と関連するため、裁判所は審査を行うことができる。👉 解説
  4. ❌ 地方議会の自律権は、議院の自律権とは異なり法律上認められたものにすぎないので、裁判所は、除名に限らず、地方議会による議員への懲罰について広く審査を行うことができる。👉 解説
  5. ❌ 地方議会の議員は、住民から直接選挙されるので、国会議員と同様に免責特権が認められ、議会で行った演説、討論または表決について議会外で責任を問われない。👉 解説

解説

1: ⭕ 衆参両議院の比例代表選出議員に欠員が出た場合、当選順位に従い繰上補充が行われるが、名簿登載者のうち、除名、離党その他の事由により名簿届出政党等に所属する者でなくなった旨の届出がなされているものは、繰上補充の対象とならない。

公職選挙法 98 条 3 項の通り。

2: ❌ 両議院の議員は、国会の会期中逮捕されないとの不逮捕特権が認められ、憲法が定めるところにより、院外における現行犯の場合でも逮捕されない。

憲法 50 条を参照すると前半は正しい。一方、「院外における現行犯の場合でも逮捕されない」という定めはないので後半は間違っている。

ちなみに国会法 33 条にも「院外における現行犯罪の場合を除いては、会期中その院の許諾がなければ逮捕されない」と記されており、現行犯を含めた不逮捕特権などは存在しない。

3: ❌ 両議院には憲法上自律権が認められており、所属議員への懲罰については司法審査が及ばないが、除名処分については、一般市民法秩序と関連するため、裁判所は審査を行うことができる。

憲法 58 条 2 項を参照すると前半は正しい。一方、「除名処分について裁判所は審査を行うことができる」という後半は間違っている。除名処分にも自律権が認められている。

4: ❌ 地方議会の自律権は、議院の自律権とは異なり法律上認められたものにすぎないので、裁判所は、除名に限らず、地方議会による議員への懲罰について広く審査を行うことができる。

除名処分は司法審査の対象になる。「懲罰について広く審査を行うことができる」という部分は間違っている。「内部規律の問題として自治的措置に任せ、必ずしも、裁判に待つを適当としない」という範例がある(最大判昭和 35 年 10 月 19 日)。

5: ❌ 地方議会の議員は、住民から直接選挙されるので、国会議員と同様に免責特権が認められ、議会で行った演説、討論または表決について議会外で責任を問われない。

全面的に間違っている。「国会について、憲法 51 条に、いわゆる免責特権を与えているからといつて、その理をそのまま直ちに地方議会にあてはめ…保障しているものと解すべき根拠はない」という範例がある(最大判昭和 42 年 5 月 24 日)。

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