行政書士 過去問 2019 問題 27

問題 27 時効の援用に関する次のア〜オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものの組合せはどれか。

  1. 時効による債権の消滅の効果は、時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく、時効が援用されたときにはじめて確定的に生ずるものである。
  2. 時効の援用を裁判上行使する場合には、事実審の口頭弁論終結時までにする必要がある。
  3. 被相続人の占有により取得時効が完成していた場合に、その共同相続人の一人は、自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができる。
  4. 保証人や連帯保証人は、主たる債務の消滅時効を援用することはできるが、物上保証人や抵当不動産の第三取得者は、被担保債権の消滅時効を援用することはできない。
  5. 主たる債務者である破産者が免責許可決定を受けた場合であっても、その保証人は、自己の保証債務を免れるためには、免責許可決定を受けた破産者の主たる債務について、消滅時効を援用しなければならない。
  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. ウ・オ
  5. エ・オ

正解 5

  1. ⭕ 時効による債権の消滅の効果は、時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく、時効が援用されたときにはじめて確定的に生ずるものである。👉 解説
  2. ⭕ 時効の援用を裁判上行使する場合には、事実審の口頭弁論終結時までにする必要がある。👉 解説
  3. ⭕ 被相続人の占有により取得時効が完成していた場合に、その共同相続人の一人は、自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができる。👉 解説
  4. ❌ 保証人や連帯保証人は、主たる債務の消滅時効を援用することはできるが、物上保証人や抵当不動産の第三取得者は、被担保債権の消滅時効を援用することはできない。👉 解説
  5. ❌ 主たる債務者である破産者が免責許可決定を受けた場合であっても、その保証人は、自己の保証債務を免れるためには、免責許可決定を受けた破産者の主たる債務について、消滅時効を援用しなければならない。👉 解説

解説

ア: ⭕ 時効による債権の消滅の効果は、時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく、時効が援用されたときにはじめて確定的に生ずるものである。

妥当である。「時効による債権消滅の効果は、時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく、時効が援用されたときにはじめて確定的に生ずるものと解するのが相当であり…」(最判昭和 61 年 3 月 17 日)とする判例による。

イ: ⭕ 時効の援用を裁判上行使する場合には、事実審の口頭弁論終結時までにする必要がある。

妥当である。「時効の援用を裁判上で行使する場合は、事実審の口頭弁論終結時までにする必要がある」(大判大正 12 年 3 月 26 日)とする判例による。

ウ: ⭕ 被相続人の占有により取得時効が完成していた場合に、その共同相続人の一人は、自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができる。

妥当である。「時効の完成により利益を受ける者は自己が直接に受けるべき利益の存する限度で時効を援用することができるものと解すべきであって、被相続人の占有により取得時効が完成した場合において、その共同相続人の 1 人は、自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができるにすぎないと解するのが相当である」(最判平成 13 年 7 月 10 日)とする判例による。

エ: ❌ 保証人や連帯保証人は、主たる債務の消滅時効を援用することはできるが、物上保証人や抵当不動産の第三取得者は、被担保債権の消滅時効を援用することはできない。

妥当でない。145 条に「時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。」と記されているので、当事者には、物上保証人と第三取得者が含まれている。

オ: ❌ 主たる債務者である破産者が免責許可決定を受けた場合であっても、その保証人は、自己の保証債務を免れるためには、免責許可決定を受けた破産者の主たる債務について、消滅時効を援用しなければならない。

妥当でない。「免責決定の効力を受ける債権は、債権者において訴えをもって履行を請求しその強制的実現を図ることができなくなり、右債権については、『権利を行使することができる時』を起算点とする消滅時効の進行を観念することができないというべきであるから、破産者が免責決定を受けた場合には、右免責決定の効力の及ぶ債務の保証人は、その債権についての消滅時効を援用することはできないと解するのが相当である。」(最判平成 11 年 11 月 9 日)とする判例による。
なお、破産法 253 条 2 項に「免責許可の決定は、破産債権者が破産者の保証人その他破産者と共に債務を負担する者に対して有する権利及び破産者以外の者が破産債権者のために供した担保に影響を及ぼさない。」と記されているので、保証人等には依然として債務が残されているということになるが、債権についての消滅時効を援用することはできないが、保証債務の消滅時効の援用は通常できると考えられる

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