行政書士 過去問 2019 問題 07

問題 7 動物愛護や自然保護に強い関心を持つ裁判官 A 氏は、毛皮の採取を目的とした野生動物の乱獲を批判するため、休日に仲間と語らって派手なボディペインティングをした風体でデモ行進を行い、その写真をソーシャルメディアに掲載したところ、賛否両論の社会的反響を呼ぶことになった。事態を重く見た裁判所は、A 氏に対する懲戒手続を開始した。
このニュースに関心を持った B さんは、事件の今後の成り行きを予測するため情報収集を試みたところ、裁判官の懲戒手続一般についてインターネット上で次の 1 〜 5 の出所不明の情報を発見した。このうち、法令や最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 裁判官の身分保障を手続的に確保するため、罷免については国会に設置された弾劾裁判所が、懲戒については独立の懲戒委員会が決定を行う。
  2. 裁判官の懲戒の内容は、職務停止、減給、戒告または過料とされる。
  3. 司法権を行使する裁判官に対する政治運動禁止の要請は、一般職の国家公務員に対する政治的行為禁止の要請よりも強い。
  4. 政治運動を理由とした懲戒が憲法 21 条に違反するか否かは、当該政治運動の目的や効果、裁判官の関わり合いの程度の 3 点から判断されなければならない。
  5. 表現の自由の重要性に鑑みれば、裁判官の品位を辱める行状があったと認定される事例は、著しく品位に反する場合のみに限定されなければならない。

正解 3

  1. ❌ 裁判官の身分保障を手続的に確保するため、罷免については国会に設置された弾劾裁判所が、懲戒については独立の懲戒委員会が決定を行う。👉 解説
  2. ❌ 裁判官の懲戒の内容は、職務停止、減給、戒告または過料とされる。👉 解説
  3. ⭕ 司法権を行使する裁判官に対する政治運動禁止の要請は、一般職の国家公務員に対する政治的行為禁止の要請よりも強い。👉 解説
  4. ❌ 政治運動を理由とした懲戒が憲法 21 条に違反するか否かは、当該政治運動の目的や効果、裁判官の関わり合いの程度の 3 点から判断されなければならない。👉 解説
  5. ❌ 表現の自由の重要性に鑑みれば、裁判官の品位を辱める行状があったと認定される事例は、著しく品位に反する場合のみに限定されなければならない。👉 解説

解説

1: ❌ 裁判官の身分保障を手続的に確保するため、罷免については国会に設置された弾劾裁判所が、懲戒については独立の懲戒委員会が決定を行う。

罷免についての前半は正しい。一方、懲戒処分は、行政機関がこれを行うことはできない(憲法 78 条)ため「独立の懲戒委員会が決定を行う」のではなく、分限裁判によってなされる。

2: ❌ 裁判官の懲戒の内容は、職務停止、減給、戒告または過料とされる。

裁判官の懲戒の内容は、「戒告又は過料とされ」、「職務停止、減給」は記されていない。(裁判官分限法 2 条)

3: ⭕ 司法権を行使する裁判官に対する政治運動禁止の要請は、一般職の国家公務員に対する政治的行為禁止の要請よりも強い。

その通り。(最大決平成 10 年 12 月 1 日)

4: ❌ 政治運動を理由とした懲戒が憲法 21 条に違反するか否かは、当該政治運動の目的や効果、裁判官の関わり合いの程度の 3 点から判断されなければならない。

全体的に間違っている。①禁止の目的の正当性、②目的と禁止との間の合理的関連性、③禁止により得られる利益と失われる利益との均衡の 3 点から判断される。(最大決平成 10 年 12 月 1 日)

5: ❌ 表現の自由の重要性に鑑みれば、裁判官の品位を辱める行状があったと認定される事例は、著しく品位に反する場合のみに限定されなければならない。

裁判官の品位を辱める行状とは、「著しく品位に反する場合のみに限定され」ず、「裁判官に対する国民の信頼を損ね、又は裁判の公正を疑わせるような言動をいうものと解する(最大決平成 30 年 10 月 17 日)」とされる。

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